この指針は、医療法第六条の九~二十七(第三章 医療の安全の確保)及び医療法施行規則第一条の十の一~十三の十(第一章の三 医療の安全の確保)を根拠法令とし、診療報酬の算定要件として義務づけられる規定に基づき、特定医療法人雄博会千住病院(以下、「当院」という。)における医療安全管理体制の確立、医療安全管理のための具体的方策及び事故発生時の対応方法等についての基本方針を以下の通り示すものである。当院は本指針に基づき適切な医療安全管理を推進し、安全な医療の提供に資することを目的とする。
医療安全の推進は、当院の理念を達成し良質で安全な医療を提供するための最も基本的な要件である。医療技術及び医療システムが、高度化、先進化、複雑化、専門分化、機械化、自動化しても、医療とは最終的には人の手作業で遂行される営みである。そして人が「ミス」を犯す存在(to error is human)(human error)であるという危機意識を常に持ち、業務にあたることが必要である。
インシデント・アクシデント報告制度において明らかにされた問題点を、科学的に分析し、その原因究明に基づいて改善や予防策・再発防止策を提案しなければならない。さらには、各医療者が相互のコミュニケーションを密にして、経験や教訓及び情報を共有し、多職種協働でチーム医療を実践していくことも重要である。そして何より、患者・家族との信頼関係構築を重視し、患者主体の医療を展開しなければならない。発生した医療事故に対しては患者・家族のみならず社会に対しても十分な説明責任を果たし、原因究明と再発防止に取り組まなければならない。
医療安全管理体制を確立するために、以上の取り組みを根づかせ育成し「安全文化」の醸成につなげ、医療事故防止の強化充実を継続的に図っていく必要がある。
本指針の医療安全管理に関する用語を以下に定義する。
インシデントとは、日常診療の現場で、ヒヤリとしたり、ハッとしたりした経験を有する事例を指し、実際には患者へ傷害を及ぼすことはほとんどなかったが、医療有害事象へ発展する可能性を有していた潜在的事例をいう。
具体的には、ある医療行為が、①患者へは実施されなかったが、仮に実施されたとすれば、何らかの傷害が予測された事象、②患者へは実施されたが、結果として患者へ傷害を及ぼすには至らなかった不適切な事象、又は③結果として比較的軽微な傷害を及ぼした事象を指す。
なお、患者だけでなく訪問者や医療者に、傷害の発生又はその可能性があったと考えられる事象も含む。
インシデント・アクシデントの患者影響度分類では、レベル0~2が対象となる。医療の過程において患者に発生した望ましくない事象。また、医療提供側の過失の有無は問わず、不可抗力と思われる事象も含む。当院ではレベル3以上をアクシデント(医療事故)とみなす。
アクシデントとは、防止可能なものか、過失によるものかにかかわらず、
医療に関わる場所で、医療の過程において、不適切な医療行為(必要な医療行為がなされなかった場合を含む。)が、
結果として患者へ意図しない傷害を生じ、その経過が一定程度以上の影響を与えた事象をいう。
インシデント・アクシデントの患者影響度分類では、レベル3~5が対象となる。
なお、平成27年10月1日に制度施行された医療事故調査制度における医療事故の定義は、本定義とは異なることに留意する必要がある。
医療法第六条の十に規定する医療事故をいう。なお、「医療事故調査制度に係る指針」「医療事故調査制度に係る規程」「院内事故調査委員会の設置に関する規程」は別に定める。
当院内に医療安全管理部門を設置し、以下の事項を基本として、院内に組織的に医療安全対策を実施する体制を整備する。
医療安全管理の推進のために、院長・副院長の下に、医療安全管理者、医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理責任者、医療放射線安全管理責任者を置き、さらに部門においては、医療安全推進担当者を配置するものとする。
医療安全管理者は、当院における医療安全管理に係る実務を担当し、医療安全を推進する者とする。
医薬品安全管理責任者は、当院の管理者の指示の下に、次に掲げる業務を行う者とする。
医療機器安全管理責任者は、当院の管理者の指示の下に、次に掲げる業務を行う者とし、以下の業務について主要な役割を担う。
医療放射線安全管理責任者は、当院の管理者の指示の下に、次に掲げる業務を行う者とし、以下の業務について主要な役割を担う。
医療安全管理部門の作業部会として、組織横断的に院内各部門の医療安全管理を担う「医療安全管理チーム(SMT; safety management team)」(以下、「SMT」という。)を置き、医療安全管理室と協働して業務を遂行する。SMTは、副院長(SMT leader)、医療安全管理者、医薬品安全管理責任者(薬剤科長)、医療機器安全管理責任者(ME技士)、医療放射線安全管理責任者(放射線科長)及び院長が指名した者で組織する。SMTは、医療安全管理者を中心としてインシデント・アクシデント事例を多角的に分析するとともに、緊急な対応、再発防止及びその他の対策に関して、専門的に調査、審議、報告し、医療事故の防止・安全の確保等の業務を担うものとする。またSMTは、医療安全管理を確保するため患者の療養環境、職員の業務環境、及び備品の保管・管理等の整備について、関係部門・部署と連携し対応するものとする。
当院は、各部門の医療安全管理の推進に資するため医療安全推進担当者を置く。
診療情報の共有は、当院全職員と患者及びその家族との良好な信頼関係を構築することを目的とする。
特定医療法人 雄博会 2024年(令和6年)10月1日一部改訂